私がまだ10代の1976年2月からNHKのテレビドラマ「男たちの旅路」シリーズは放映されました。このドラマは、一言で言うならば、「世代も背景も異なる警備会社のガードマンたちが、仕事の中から拾い出した疑問に対し真面目に向き合う姿を描くドラマ」です。私が今まで見たテレビドラマの中で最も「骨太なテレビドラマ」であると思います。
主演は鶴田浩二で、警備会社の社員である吉岡晋太郎(吉岡 司令補)という役を演じています。吉岡は特攻隊の生き残りという設定で、戦争への疑念や戦死した仲間に対する引け目を背負って生きています。
吉岡は、若いガードマンに対してときに容赦なく暴力を振るうことがあります。そのように描いているのは、戦中派世代と戦後生まれ世代との価値観の違いに対する戦中派の強い憤りが、このドラマを制作する上での大きなテーマになっているからだと思います。
この「男たちの旅路」は1976年2月から1979年11月までの間、不定期に3話ずつ4回計12話放送されました。その後、1982年2月にはスペシャルとして1話のみ放送されています。
私は第3部の第一話「シルバー・シート」がとても印象に残っています。都電の車庫内に停まっている1両の車両をジャック(ドラマでは電ジャックと呼んでいました)した老人達。彼らの要求するものは?という感じの内容で、70年代という時に早くも高齢者問題を鋭く描いています。なお、この「シルバー・シート」は1977年度の芸術祭大賞を受賞しています。何と言っても、笠 智衆の演技が見事でした。
「男たちの旅路」には、鶴田浩二の他、水谷 豊、桃井かおり、森田健作、柴 俊夫、清水健太郎、岸本加世子らの豪華なキャスト陣(全員が同時に出演ではなく、最初の部だけとか、途中の部からとかの出演でした)もこのドラマの大きな魅力と言えましょう。それにしても今このドラマを見ると、当時の出演者の方たち、若いですね!
そうそう、脚本はあの山田太一です。音楽はミッキー吉野が担当、テーマ曲や挿入曲がとてもこのドラマに合っていました。テーマ曲および挿入曲のオリジナル・サウンドトラックは下記のYou Tube(お手数ですがアドレスバーにコピペしてください)でお聴きください。いやァ、当時を思い出して涙が出てきますね!
http://www.youtube.com/watch?v=gdRkfdcDsTo
それと、第4部第三話「車輪の一歩」の冒頭部15分は下記のyou Tubeでご覧ください。この「車輪の一歩」は評価が高く、何度か再放送されています。オープニングの「土曜ドラマ」を街の電光ニュースで流すところから始まっていますので、これは貴重ですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=qRV3gjEalA4
ああ、この「男たちの旅路」を越える骨太のテレビドラマが現れないものでしょうか。参考までに、このドラマのVHSビデオのパッケージ(第1部第一話の非常階段)を載せてみました(左:森田健作、中央:鶴田浩二、右:水谷 豊)。